こんにちは。STケアマネのナカマル@NBTKST2222です。
10年間ほど言語聴覚士(ST)として飲み込みや言葉の訓練のプロとして仕事をしていました。
現在は、言語聴覚士でありケアマネージャーであり、現場の介護スタッフとして介護施設で働いています。
このブログでは、介護・医療職が悩みがちな
○臨床(言語聴覚士の専門の1つである摂食・嚥下を中心)のこと
○お金に関係すること
○職場の人間関係について
について発信しています。
今回は一般の方から介護・医療従事者まで参考にしていただきたい脳血管疾患の早期発見について解説します。
脳血管疾患とは

まずは脳血管疾患の定義について触れます。
脳血管疾患とは、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・急性硬膜下血腫・慢性硬膜下血腫などの脳血管の異常で起こる疾患を総称して言います。
似た用語で脳卒中と言う言葉がありますが、これは脳梗塞と脳出血、くも膜下出血の3つを総称して言います。つまり、脳血管疾患は脳卒中よりもう少し広い概念ということです。
脳血管疾患の症状

脳血管失火の症状は多岐に渡ります。すべての症状が出るわけではありませんが、可能性の高い症状を4つ紹介したいと思います。

麻痺
恐らく最も有名な症状が体の麻痺だと思います。手や足の半身麻痺をイメージする方がおおいかもしれませんが、顔面にも麻痺が生じます。手だけに強く麻痺が出る人、足だけに麻痺が出る人もいますし、手も足も顔も麻痺が生じる人もいます。
麻痺の程度も様々で、全く手足が動かないほど重度の麻痺もあれば、日常生活にほぼ影響がない程度の麻痺まで様々です。全く麻痺がない方もいますので、麻痺がないから脳血管疾患ではないと断定できないことにも注意が必要です。
意識障害
意識障害に関しては、重症度が高い場合に生じます。特に、脳出血やくも膜下出血で意識障害は出やすいですが、勿論、脳梗塞や急性硬膜下血腫などでも生じます。
意識障害が出る場合は、生命に影響してきますので、かなり緊急性が高い状況となります。
めまい・頭痛
めまいや頭痛も脳血管疾患の症状の1つです。めまいに関しては、メニエールと間違えて耳鼻科に行ってしまう方もいるかもしれませんが、小脳に病巣があると、脳血管疾患でもめまいが生じます。小脳は特に出血しやすい部位です。失調症状(手が震える。細かい操作が出来なくなる。)と呼ばれる症状などが同時に現れるため、メニエールなどの耳が原因で起こるめまいとは明らかに症状が異なります。
また、頭痛は脳出血やくも膜下出血などで生じやすいです。特にくも膜下出血は、「金属バットで殴られたような痛み」と表現されるほど強い頭痛が生じます。

言語障害
言語障害は失語症や構音障害が生じます。左脳の場合は失語症を生じる可能性が非常に高いです。詳細は別記事にまとめていますのでご参照下さい。
FAST

4つの症状について解説しましたが、この4つを常に頭に入れておくのは難しいって人もいるかもしれません。そこで覚えやすい語呂合わせが通称「FAST」です。
F=顔・・・顔面の麻痺
A=腕・・・腕の麻痺
S=言葉・・・言語障害
T=時間・・・時間との勝負。早く病院へ!
もしもの時に備えてこの「FAST」を覚えておくといいでしょう。
早期発見の落とし穴について
ここまで脳血管疾患の症状について、解説してきましたが、ここからはさらに深堀して早期発見を見落としてしまいがちな落とし穴について解説していきます。
落とし穴①

早期発見を妨げる落とし穴1つ目は一過性脳供血発作(TIA)と呼ばれる症状です。具体的には、麻痺などの脳血管疾患を疑う症状が24時間で消失してしまうケースを一過性脳虚血発作と言います。
24時間以内で消失してしまうといっても、安心はできません。むしろ、治療が必要な状態です。何故なら、高い割合で脳梗塞になる可能性が高いからです。
脳梗塞は時間との勝負なので、TIAであっても早期に治療をする必要があります。
脳卒中ガイドラインにおいても、脳梗塞の再発予防でアスピリンを投与することが推奨されています。
そのため、麻痺など脳血管疾患を疑う症状が出て、そのあとに消失した時は、「様子を見よう」ではなくて、すぐに病院に行く必要があります。
落とし穴②

早期発見を妨げる落とし穴2つ目は、慢性硬膜下血腫と呼ばれる症状です。
転倒してしまい、頭を強く打つと頭の中で出血をすることがあります。頭の中で出血を起こし、急速に症状が出るのが急性硬膜下血腫と言います。
ですが、頭の中の出血がゆっくりで症状が出るまでに数日から数週間かかることがあり、これを慢性硬膜下血腫と言います。慢性硬膜下血腫のやっかいなところは、転倒したすぐにCTの検査をしても分からないことがあることです。症状が出るまでに時間もかかるため発見が遅れてしまいます。
転倒して数週間かけて症状が出ることも知っておきましょう。
落とし穴③

早期発見の落とし穴の3つ目は、脳血管疾患の症状が必ずしも出現するわけではないということです。これは医療職でも陥りがちです。
・脳梗塞だと必ず麻痺がでる。でもこの人は麻痺がないから大丈夫。
・言葉も特に問題ないし、意識レベルも低下していないから大丈夫。
・食事も取れているから大丈夫。
小さな病巣だと明らかな症状が出ないこともありますが、脳血管疾患を発症していない根拠にはなりません。
そのため、麻痺がなく、言葉も大丈夫、意識もある。でも何か反応が悪い。そんな時でも頭の検査をすることをおすすめします。

実際にあったケースについて

最後に、ナカマルが体験した脳血管疾患を早期発見できたケースを3紹介したいと思います。
ケース①
脳梗塞で入院中の方。失語症がありナカマルが担当していました。毎日失語症のリハビリをしている中で、いつもより失語の症状が強く出てることに気づきました。看護師さんに相談するも、「いつもと変わらない」と返事がありました。個人的には毎日関わっていたこともあり、明らかに違うと思い、主治医に検査を依頼して脳梗塞の再発に気づけました。
病院であれば、病棟看護師に相談するのが前提とは思いますが、再発の疑いがあるときは、直接、主治医に相談するようにしましょう。
ケース②
介護施設に入所していた方が転倒。転倒してすぐに頭部CTを撮影したが、異常なし。
でも、徐々に食事が入りづらくなったきた。そのため、改めて検査してみたら頭の中で出血していた。
落とし穴の2つめで紹介したケースがまさにこれですね。基本的には慢性硬膜下血腫は頭の中の血を抜けば認知機能の低下も改善するとされていますが、高齢者の場合は、認知機能が低下したり、その間に誤嚥性肺炎を起こしてしまったり。
慢性硬膜下血腫は決して侮れません。
ケース③
施設入所方が歩行中に膝折れ。スタッフが近くにいたため、転倒はしなかったものの足に何となく違和感があるとのこと。一度座ってもらい、動かしてもらうと、手も足もしっかり動いている。でも歩き出すとほんの少し、違和感があるとのことだが、痛みはない。
最初は何かしらの整形疾患を疑うも、既往歴を振り返ると脳梗塞の既往。
脳梗塞は再発率が非常に高い疾患のため、MRI検査をすると新しい脳梗塞が見つかる。
明らかな脳血管疾患の症状が出現したわけではありませんが、何かおかしいという小さな異変から早期発見につながったケースです。
まとめ

最後にまとめです。脳血管疾患は、早期発見が大事です。何故なら、予後に影響するから。
経験のあるスタッフでも大丈夫。まずは様子を見ようとなりがちですが、早めに検査をすることが早期発見につながります。
検査してみて何もなければ問題はありません。でも発見が遅れると後遺症が強く残る可能性もあります。
「FAST」を頭の片隅に入れておくことで、脳血管疾患の早期発見につながると思うので、是非、覚えておきましょう。