こんにちは。ST介護士のナカマル@NBTKST2222です。
10年間ほど言語聴覚士(ST)として飲み込みや言葉の訓練のプロとして仕事をしていました。
現在は、言語聴覚士でありケアマネージャーであり、現場の介護スタッフとして介護施設で働いています。
このサイトでは、言語聴覚士の専門の1つである摂食・嚥下に関係する情報発信をしていきます。
今回は高齢者の死亡原因として最も多い誤嚥性肺炎の以外な情報を3つ解説します
1 誤嚥性肺炎の原因は食ベ物や飲み物じゃない?
誤嚥性肺炎とは、一般的に食べ物や飲み物を誤嚥することによって生じると説明されることが多いです。決して間違いではないのですが原因そのものは食べ物や飲み物ではありません。あくまで唾液内に含まれる細菌が原因であり食べ物や飲み物と一緒に細菌を誤嚥することで発症します。
誤嚥性肺炎というと嚥下機能が悪いことで起こるためすぐに食事形態を下げたり飲み物にトロミを付けたりするのを優先しがちです。しかし真っ先にするべき取り組みは口腔ケアの方法や頻度の見直しです。いくら食事形態や飲み物を見直しても口腔内が汚れたままであれば誤嚥性肺炎を防ぐことはできません。
誤嚥性肺炎は嚥下機能の低下により起こりますが、嚥下機能をすぐに改善することは不可能です。そして、食事形態の変更や飲み物にトロミをつけても確実に誤嚥をなくすことはできません。
一方で口腔ケアの質を上げることで口腔内の細菌を減らすことは努力次第で確実に可能となります。食後の口腔ケアのみでなく食前の口腔ケアをすることで食事中に誤嚥しても誤嚥性肺炎の発症の確率を減らすようにしましょう。
2 誤嚥性肺炎は必ず発熱する?
一般的に肺炎になった場合には38℃以上くらいの熱がでることが多いです。菌と戦うため体が体温を高くしているためです。もちろん、誤嚥性肺炎でも熱が出ることが多いのですが、必ずしも発熱するわけではありません。誤嚥性肺炎になる患者さんはもともと体力が弱っており細菌と戦うことができるほどの体力がないこともあります。そのため、平熱や微熱なのに重症の誤嚥性肺炎だったという場合があるのです。
発熱していないから大丈夫ではなく
・何となく元気がない
・1日中ぼーっとしている
・喉がごろごろしている
・口腔内が汚い
などの症状も誤嚥性肺炎の特徴となります。誤嚥性肺炎は早期発見・早期治療することが大事なのでこれらの症状がないかも気を配りましょう。
3誤嚥性肺炎の診断は難しい?
嚥下機能が低下している人が肺炎を起こすと基本的に誤嚥性肺炎の診断がつきます。ですが、誤嚥したかどうかは嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)をしないと分かりません。
では何故誤嚥したかどうか分からないのに誤嚥性肺炎の診断がつくのでしょうか?
実は誤嚥性肺炎の多くは誤嚥性肺炎の疑いであって確定診断をしているわけではないのです。
日本呼吸器学会 医療・介護関連肺炎診療ガイドライン、成人院内肺炎診療ガイドラインによると
誤嚥の直接観察つまり
①明らかな誤嚥が直接確認され、それに引き続き肺炎を発症した
②肺炎例で気道より誤嚥内容が吸引などで確認された例
この2つが誤嚥性肺炎の各実例とされています。
実際は誤嚥性肺炎の診断がつく場合でもこの2つに該当するケースは少ないのでほとんどの場合は嚥下機能が低下していることや免疫力が低下していることなどから誤嚥性肺炎だろうと予測をしているにすぎないのです。
まとめ
今回は誤嚥性肺炎に関する意外な情報3選を解説しました。誤嚥性肺炎は身近な疾患でありますが、その実態については知られていないことも多くあります。誤嚥性肺炎について正しい知識を知ることは予防する観点でも非常に大事なことです。介護・医療従事者や高齢者に関わっている方は誤嚥性肺炎についての知識をつけていただけたらと思います。